2009/05/02 プレゼント第23弾
プレゼント第23弾は綾辻行人(アヤツジ ユキト)著 『 十角館の殺人 』(新装改訂版) です。
(※ちなみに綾辻さんのペンネームの「辻」の字は、しんにょうの点が2つ)
前回の 「 そして誰もいなくなった 」 に非常に良く似た設定で、
孤島が舞台であり、次々と人が亡くなっていくという、ま、内容自体はひどく嫌なお話です。
作中でも 「 そして誰もいなくなった 」 の内容を引用した部分も出てきます。
従って読む順番としては、「そして〜」を先に読む方が良いでしょう。
レビューに多く記載されていました「衝撃の一行」。
今回は「新装改訂版」のため、その一行が次のページの頭になるように工夫されています。
最初は、この「衝撃の一行」が分からなかったらどうしよう、などと考えていましたが。
心配する必要はなく、やはり直ぐに分かりました。にくい演出が施されています。
この作品を読んだ感想は、「色々あったけど、結局はかなり面白かった。」と言えます。
そしてこれは、私にとっては「そして誰もいなくなった」の読後の感想とほぼ同様でした。
(勿論、後味は全く異なりますが。)
更に私にとってこの2作に共通していたのは、結構早い段階で真相を推測できてしまったという点。
然しだからと言ってこの本が途中で面白くなくなってしまった、ということが全くなかったという点。
この種の作品を読むことは少ないので、何ともいえないのですが、
このことについて少し考えてみました。
まず設定が似ているだけでなく、プロットが良く作り込まれているという点も共通していると感じたのですが、
何と言うのか、プロットの完成度を高め、登場人物の志向や社会性などにある程度の一貫性を持たせ、
文体や発言などの無駄を削ぎ落として文芸性を高めていくと、
かなりこみ入った複数犯の犯行という設定(然し、こうすると完成度が下がる気がする)などではない限り、
結構、分かってしまうものだと感じました。
恐らく完成度が高ければ高いほど、このような傾向が見受けられるのではないかと感じました。
例えば私自身がストーリーを作るとしたら、まず動機や結論などを収束に見立て、まずはその部分を作り込み、
ここから展開してプロットを組み立て、その間に要素や機会などを埋め込んで筋立てていくと思うのですが、
まず、この動機や結論に必然性がなければお話になりません。
然もお話や可能性などを拡げるだけ拡げて終わり、という訳にもいかないジャンルなので、
いずれは展開したものをひとつに繋げて収束させていかなければならず、
その線をはっきりくっきりとした一本のものにしようとすればするほど、
逆算しやすくなってしまうのではないかと思うのです。
これ以上記すと「ネタバレ」するかも知れませんので止めますが、
この点では、テレビドラマなどにありそうな、もう無茶苦茶な設定、という方が、
最後の最後まで何でもありそうだから違う意味で見ている方も油断ができない!、
などという変な楽しみがあったりするのかも知れませんが、
然しどちらを選ぶかと言えば、やはりそれは勿論完成度の高い方でしょう。となります。
ただそれでも先にも記しましたが、読んでいて非常に面白く、一気に読んでしまいます。
多分それは作品をいかにして「飽きさせずに見せるか」という、エンターテイメント的要素が
非常に重要になるジャンルだからではないかと考えました。
まだはっきりしていないストリーリーの真相と、読み手の推理とが
余りかけ離れたものにならないようにコントロールし、
読み手の推理を育て、満足させ、期待通りに裏切り、などというプロセスが必須なジャンルではないかと考えました。
そして、こういう作品を生み出すことって、大変だろうと、
好きでないとやはり作れないだろうなと思いました。
何か今回、この似た設定の2作を読んだことによって、
これからの読書の楽しみ方を、またひとつを見つけたような気がしました。
情報館よりこの書籍を1名の方にプレゼントさせて頂きます。
勿論、私が読んだものではなく別の新品です(念の為)。
顧客サービスの一環ですので、ご応募は登録会員の方、
または弊社を通して過去に売買物件をご購入頂いたお得意様の限定とさせて頂きます。
ご応募はメールフォームから。締め切りは2009年05月18日午前0時までとさせて頂きます。
05月21日、不肖荒井が手を洗い浄めた上、厳正且つ粛々とサイコロを振り、ご当選者が決定致しました。
ご当選者は、「 bakutoDNAno.1 」様です。おめでとうございます。同日郵送にて発送させて頂きました。
|