忘れ雪/新堂冬樹(しんどうふゆき)著
 忘れ雪/新堂冬樹(しんどうふゆき)/角川書店/文庫/584p/780円(税込)/2005年2月発行
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  2009/11/22 プレゼント第38弾

  プレゼント第38弾は、新堂冬樹(しんどうふゆき)著、「 忘れ雪 」を2名の方へ。
  新書と文庫を合わせて100万部以上のセールスを上げたベストセラーのようなので、
  何も今更ながらというむきもあるでしょう。検索してみますと、宝塚でも舞台化されたようです。
  然し私は最近読みましたので、そのような方もおられるかと。

  ストーリーはベタベタです。殆ど時代劇の世界です。展開も力技で持って行ってます(笑)。
  冴え渡る力技という点では、新堂さんの真骨頂?(すみません、まだ数冊しか読んでないのですが)という感じです。
  また、カラスに死肉を食べさせたり、そういう気持ちの悪い描写は殆ど出てきませんので安心できます。
  バイオレンス的な描写も最後に少々(でもないか)という感じです。
  そして力技で持って行っていますので、随所に綻びが散見されます。
  ですから普通、その他沢山の本(新堂さんの本という意味ではない)と同様に、
  敢えて紹介することもなさそうなのですが、ところがどっこい、いいんですよ。お客さん。
  時代劇的にいいんです。

  どこがいいのかと言いますと、この一点、主人公のひとり、深雪という女の子が良いのです。惚れましたね。
  う〜ん、これは珍しく簡単にストーリーを紹介する必要がありそうです。


  小学生6年生の深雪は、両親を交通事故で亡くしてから東京の伯父(母親の兄)の家に引き取られていた。
  伯父は退職金を元手に日用雑貨店を開業しており、経営も順調であったが、
  近所に大手資本のディスカウントショップが開業すると、途端に家業は左前になる。
  破産を決意した伯父夫婦の出した結論は、深雪を京都の弟(資産家で子供がいない)のところへやることだった。

  人一倍孤独な心を守るため、深雪が得た処世術は、正反対に快活で屈託のない少女を演じることだった。
  だから、京都に行くことになったと告げられた時も、「一度住んでみたかったんだ」と無邪気に話した。
  こうして遠慮しているとはいえ、それでもようやく慣れた伯父夫婦との暮らしも、たった1年で終わりを告げる
  こととなり、あとひと月で東京を去ることになったのだった。

  家へ帰る途中にある、ひとりで落ち着くことのできるお気に入りの公園に寄り道をしていると、
  植え込みに、怪我をしたラブラドールの仔犬を見つける。
  自分の境遇に重なるその仔犬を抱きしめると、春の淡雪が舞い落ちてくる。
  深雪は途方に暮れる。

  祖母から母親、そして深雪は母親から伝え聞いた
  「春の忘れ雪が降ったときに願い事をすれば必ず叶う」という言葉を思い出し、
  この仔犬を助けて、と祈る。
  すると、背後から「どうしたの?」と声を掛けられる。
  下校中の高校生は近所の動物病院の長男で、桜木一希という青年だった。
  そして深雪はこの心優しい青年に恋をする。

  桜木動物病院で治療をして貰った仔犬は、わき腹に十字架のような痣があることから、「クロス」と名付けられる。
  あの夜、伯父夫婦に対して初めて強行に我が侭を言い、飼うことを承諾して貰ったのだった。
  それから毎日、深雪は公園でクロスを遊ばせながら、スケッチを描きながら、
  本心はそれらを装って、一希に声をかけられるのを待つようになるのだった。
  やがて日課のように、一希と公園で会って話をするようになるのだが、
  刻一刻と、京都に行く日が近づいてくるのだった。

  東京最後の日、深雪は意を決し、一希に尋ねる。
  「恋人とか、いないの?」
  「どうしたの?藪から棒に?」
  「いいから、いいから。恋人はいるの?」
  「恋人なんていないよ。犬や猫しか相手にしてくれないから」
  「しょうがないわね。私が、結婚してあげる」「これは婚約指輪。私、明日、京都に引っ越すの」
  2ヶ月分の小遣いを貯めて買ったガラスの指輪を一希の小指に嵌め、
  「じゃあ、約束してくれる? あなたが獣医さんになった七年後の、
  三月十五日のいつもの時間に、このベンチで待ち合わせをするの」

  深雪は3月15日はクロスと一希と初めて会った日であり、七年後のその日に、
  この婚約指輪を持って来て、私に結婚を申し込んでほしいと説明する。
  最初は驚いて聞いていた一希も、今日を限りに京都へ行ってしまう深雪への同情と、
  また子供の話ということも手伝ってか、やがて
  「わかった。七年後の三月十五日のマリア公園。いつもの時間に、君を迎えにくるよ」と約束する。
  (以上、「 」内は本より一部引用)


  深雪自身も、やがて忘れ去られるであろう約束であることは十分に承知していたし、
  その約束と思い出で十分満足して生きていける筈だった。
  然し京都で生活し、美術大学に通うために再び東京に戻ってくるまでの6年間、
  その思い出のなかの一希の存在は大きくなるばかりだった。
  (もっとも深雪が東京の大学を志望した理由も、第一に約束を守るためだった)

  そして7年後の3月15日、深雪はクロスと一緒にマリア公園で一希を待つが、一希は来なかった。

  一希への想いを断ち切ろうと、養父の薦めるままにお見合いをした相手、「南」の運転する車が、
  ある日のこと、思い出の地に差し掛かった時、リアシートのクロスが窓を激しく引っ掻き、吠え立てた。
  不思議に思いながらも、トイレかも知れないと思った深雪は、南に車を停めるように頼む。
  すると車を降りた瞬間、クロスはもの凄い勢いで通りを突っ切り、遠くで男性にじゃれついていた。
  その男性は一希だった。偶然の再会に驚く深雪だったが、
  然し一希は深雪のことも、クロスのことも覚えていなかった。
  然し、その場で一希は深雪に、簡単に言うと「ひと目惚れ」をする。


  とまあ、簡単とはいきませんでしたが、本当の物語はここから始まるという具合なのです。
  どうです、ベタベタ(だからこそ舞台にもなるのでしょうが)ですが、
  こういう設定って、この先を読まずにはいられなくなるんですよね。
  実際、飲み屋でこの辺までの話をした時に、ひとりの方は「購入して読む」と言っていました(笑)。


  はっきり言って、一希はいい人過ぎで、優柔不断とさえ感じる場面もあるし、
  例えば深雪が笑う時に見せる「鼻梁にきゅっと縦じまが寄る」とか、
  一希の顔の前で、「本当かなァ」などと言いながら「人差し指をくるくると回す」とか、
  もう何と言うか、読んでいる方が、こっ恥かしくなるような表現も随所に見られる。
  また、いきなり「ねえ、結婚しよっか」などという発言も、相当使い古されたもののように感じる手なのだが、
  でも、これがいい!(大笑)んですな。くどいようですが、時代劇的に安心できるのですよ。
  そして深雪が気付いて欲しいというサインを出しまくっているのに
  なかなか気付かない、鈍感すぎる一希の設定は少々気の毒ですらある。
  随分昔に見たような気がするドラマのような、毎回毎回のすれ違いの構図にも似て、
  こういうのは普遍的なニーズがあるのかも知れないな、などと考えたりしました。

  そして深雪の書く手紙がいい。
  長い手紙で、普通に考えるとこんな長ったらしい手紙は書かんぞと思うのですが、
  一希がこれを読みながら、過去のことをどんどんと思い出していくシーンもいい。泣けます。
  これ以上書くと面白くありませんので、この辺にしておきますが、
  結局は深雪の健気で、いじらしいところがいいってことになる。というよりもそれしかないお話。
  でも私はこういうのに弱いことが判明。惚れましたね深雪ちゃんに。
  読後、数日間は色々な場面に戻り、ページを繰りました。
  何となくその後の深雪のことが心配になりまして(笑)。何度読んでも結末は変わらないのですが・・。

  いやあ、久し振りに長文になってしまいました。
  ここまで付き合って下さった方、おつかれさまでした。


  情報館よりこの本を2名の方にプレゼントさせて頂きます。
  勿論、私が読んだものではなく別の新品です(念の為)。
  顧客サービスの一環ですので、ご応募は登録会員の方、
  または弊社を通して過去に売買物件をご購入頂いたお得意様の限定とさせて頂きます。 
  ご応募はメールフォームから。締め切りは2009年12月9日(水)午前0時までとさせて頂きます。









  12月10日、不肖荒井が手を洗い浄めた上、厳正且つ粛々とサイコロを振り、ご当選者が決定致しました。
  ご当選者は、「 ymki1 」様と「 0208real 」様です。おめでとうございました。10日に郵送にて発送させて頂きました。



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